
突然に発表された安倍首相辞任のニュースは、とても衝撃的でした。
今回は、まだ次の総裁が決まっていないなかで、安倍首相辞任のニュースがマーケットにどのように影響を与えるのかについて、解説していきたいと思います!!
辞任発表当日の株価、為替の反応
では、今後の予測を立てる前に、当日の値動きを確認していきたいと思います。
日経平均株価は大幅下落で反応
まず、日経平均株価はこの発表の直後、大幅な下落となりました。
画像は当日の日経平均株価の値動きです。
ご覧の通り、辞任発表直後、大幅に下落していることがわかります。その後はあまり買いも入らずに始値に比べ300円安ほどで引けています。
ドル円は終日大幅に下落、円高に
ドル円相場は、大幅な円高で反応しました。
また、この円高はロンドン市場、ニューヨーク市場でも継続し、この日は買い戻しも入らず終日円高傾向で引けています。
画像は当日のドル円の値動きです。一日で高値から1.5円ほども下落していることがわかります。
東京市場での下落トレンドが継続する形で、ロンドン、ニューヨーク市場ともに続落していますね。
株価、ドル円の下落の要因
安倍首相辞任によって、上記の通り株価、ドル円ともに大幅な下落となったわけですが、一体なぜ辞任発表が下落につながったのでしょうか?
アベノミクスによる株価上昇、円安
日経平均株価は安倍首相の就任よりおよそ2.5倍ほどまで上昇しており、ドル円相場も近年円安傾向となっていました。
これはアベノミクスによるところが大きいといわれています。
アベノミクス:平成24年(2012)12月に第二次内閣を発足させた自由民主党の安倍晋三が掲げた経済政策の通称。大胆な金融政策・機動的な財政政策・民間投資を喚起する成長戦略を「3本の矢」と呼び、日本経済の再生を目指す。金融政策では、デフレ脱却のため日本銀行と連携してインフレターゲットを設定し、その達成まで日銀が建設国債を引き受ける量的緩和によって市場に資金を供給し、物価の上昇を促す。財政政策では、過去最大級の補正予算を編成。公共事業の拡大などにより需要の創出を狙う。さらに、内閣に設置した日本経済再生本部・産業競争力会議を中心に積極的な成長戦略を策定し、持続的な経済成長を目指す、というもの。総選挙中の平成24年11月に自民党総裁として日銀による建設国債の買い取りに言及したことから市場では期待が先行し、円安・株高が急速に進行した。(デジタル大辞泉より引用)
このように、アベノミクスによって急速に株価は上昇、円安傾向になっていきました。
そして、安倍首相の辞任によってアベノミクスが終わってしまうのではないか、との市場の思惑から今回このような大幅な下落につながったのだといえるでしょう。
安倍首相の辞任で本当にアベノミクスは終わる?
では、本当に安倍首相の辞任によってアベノミクスは終わってしまうのでしょうか??
結論から言いますと、その可能性は現状低いと思います。理由をご説明しますね。
ここでは、アベノミクスの終焉の定義を、わかりやすいように株安、円高としたいと思います。
そのうえでここからのお話をご理解いただけますと幸いです。
世界的な金融緩和の流れ
まず理由のひとつ目として、現在世界的に金融緩和の流れができている、ということにあります。
コロナによってダメージを受けた世界経済を立て直すべく、現在Fedを中心として世界中で大規模な金融緩和政策が実施されています。
そのような現状で、わざわざ日銀がここから利上げ等金融引き締めに踏み切るとは考えにくいです。コロナが完全には終息していなく、経済の見通しも見えないから余計です。
また、日銀の利上げはFedに遅れて実施される傾向にあります。しかし、先日のジャクソンホール会議やFOMCからわかる通り、Fedはここから数年間は利上げは行わない、というスタンスを取っています。Fedの政策に倣う形が多い日銀が、Fedに先駆けて金融引き締めに政策転換することはあまり考えにくいです。
アベノミクス期待の海外勢の買いはほぼ消化済みなのではないか
株価を押し上げる要因として無視できないのが海外投資家たちの動きです。
仮に、未だアベノミクスに対する期待感が強いならば、日本株に海外勢からの期待買いが入っており日本株の下落要因となりますが(その買いポジションを安倍首相辞任で手じまいするため)、現状の日経平均の上昇の要因は世界的な景気(特にアメリカ株)に連動したものであって、特別日本株だけに期待が集まってはいないのではないか、と思われます。
たしかにアベノミクス初期には海外勢からも大きな期待感が寄せられており、大きな買いが入っていたでしょう。しかし、すでにアベノミクス発表から数年たっており、未だにアベノミクスに対して今後の株価上昇を見越した買いが多く入っているかと言われれば、疑問が残ります。
ヘッジなし外債で運用したい本邦勢のドル買い余力
現在GPIFや生保をはじめとした本邦勢には、巨額のドル買い余力が残っているのではないかと言われています。
とくに今年3月にポートフォリオ変更を発表したばかりのGPIFからは、外債運用のためのドル需要が継続的に入るのではないかという試算もあります。
さらには、現在のドル円の位置である105円より下はここ数年何度も反発しており数年単位で低い価格なために、為替ヘッジなしで外債を運用すべく本邦からは強いドル需要が入るのではないか、と想定しています。
通常日本から外国の債券(外債)を購入する場合、日本円を現地の通貨に両替する必要があります。
つまり、日本円を売って現地通貨を買うわけです。
この時、為替の変動(価格が高いときに現地通貨を買ってしまい、価格がその後下落)による損失を抑えるために為替予約を通じて価格変動リスクを回避することを為替ヘッジを付ける、と言います。
この為替ヘッジを付けている外債のことをヘッジ付き外債、つけていない外債のことをヘッジなし外債と言います。
ヘッジ付き外債は主に円高局面で、ヘッジなし外債は主に円安局面で利用されます。
まとめ
ここまででお話してきた通り、僕自身はあまりここからさらなる下落は想定しておらず、株価、ドル円ともに下げ止まりをみせるのではないか、と考えています。
しかし、夏休み期間で流動性が低下している現在は様子見がベストなのではないか、と考えます。
また9月以降の値動きに注目ですね。