
8月に入り、材料もなくドル売りが一服した様子のマーケットですが、現在個人的に見ているものをピックアップしていきたいと思います。
米金利は0.50で下げ止まり
米金利はFedの緩和期待により低下基調が続いていましたが、8月に入り低下は一服、反転し始めています。

画像のように、米国債10年利回りは0.50%付近で反発、上昇し、コンセンサスである0.72~0.74%付近に到達していることがわかります。
米債10年金利は0.72%水準がコンセンサス
先日野村證券が出したレポートによると、米国債10年の0.72%より上に、CTAのストップが並んでいるといわれています。
CTA: "Commodity Trading Advisor"の略で、日本語では「商品投資顧問業者」や「商品取引アドバイザー」とも呼ばれており、先物運用の専門業者をいう。ヘッジファンドの一種。
そのためこの水準を突破すると、一気に金利高が進みドル高に振れる可能性があります。この水準は注視が必要ですね。

イールドカーブはベアスティープ
また、イールドカーブもベアスティープ気味と、長期債の需要は落ち着いてきているように思われます。
スティープ化:一般的には、期間が長くなるほど金利は高くなるため、普通イールド・カーブは右上がりのグラフになる。このイールド・カーブの傾きがさらに急(右上がり)になることをスティープになる、スティープ化するという。逆に短期金利と長期金利の差が小さくなる(イールド・カーブの傾きが緩やかになる)ことをフラットになるという。(野村證券より引用)
特に八月に入ってからの入札結果を見ると、短期債の需要は引き続き強い一方で、30年債、20年債ともにtailと弱い結果でした。
長期債は変化率(デルタ)が大きいため、短期債に比べ大きな価格変動のダメージを受けてしまいます。現在は長期債の供給量縮小が懸念されているために価格の下落が懸念され、長期債の需要は弱まっていると考えています。
米金利は長期債が引っ張る形で金利が上昇しており、10年債も0.72より上に大きなストップが控えているために、現在は上昇余地がどれほどなのかに注視したい段階です。
マーケットはYCCやマイナス金利期待が強い
マーケットにはFedによるYCC(イールドカーブコントロール)の導入や、マイナス金利導入に強い期待感が残っており、これがドル売りを後押ししていました。
YCC(イールドカーブコントロール):イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)は、2016年9月の日銀金融政策決定会合で日銀が新たに導入した政策枠組み「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の柱のひとつ。
2016年1月から始めた短期金利のマイナス金利政策に加え、10年物国債の金利が概ねゼロ%程度で推移するように買入れを行うことで短期から長期までの金利全体の動きをコントロールすること。(野村證券より引用)
しかし、実際にFedがYCCなどに踏み切るかどうかは不明確な部分が多く、Fedも導入には慎重な姿勢です(議論の余地はある、としていますが笑)。
今日のFOMC議事録でもYCCやマイナス金利に関しての進展は見られず、ドルの買い戻しが優勢となっています。今後もこのような状態が続けば、過度な期待感から売られていたドルは買い戻しが優勢となりそうです。
ドル円は104円台にRMや外準、年金基金の買いが控える
ドル円は今年度に入り、ドル売りに押される形で下落基調が続いてきました。
そして7月末に104円台前半を付けましたが、そこから一気に買い戻しが起こり現在は106円台~105円台で推移中です。
ここでドル円の週足を見てみましょう。

〇で示しているように、近年ドル円は104円台で何度も反発しています。現在のマーケットで短期の投機勢を除いてドル円を買ってくる主体は主に日銀、年金基金、本邦のRMなどであり、104円台がとても意識されていることがわかります。
本邦のドル円の買い余力を考えると、104円台から下は相当堅そうな印象です。
ユーロドルのロングポジションは歴史的な水準に
CFTCによると、ユーロドルの投機筋によるロングポジションは過去最高を更新し、歴史的な水準にまで達しています。過去はこの水準で何度もロングポジションの解消が起きており、意識される水準であることは間違いないと思います。
また、ユーロドルは先日1.19ドル中盤にまでさしかかり、節目の1.20ドルに迫っています。
しかし、1.20ドル付近はECBも意識してくる水準であり、ドル円の104円同様大きなドル買いのフローに注意したい水準です。
ゴールドは過去最高値更新も、NY時間の売りが目立つ
先日過去最高値を更新し、2000ドル台後半に到達したゴールドですが、その後は一転して反落、現在は1900ドル台での推移となっています。
特に先週からNY時間にゴールドの利食いとみられるフローがみられるようになり、現在もNY時間に売られる流れは継続しています。
世界的な金融緩和の流れからとても強い需要がみられているゴールドですが、この売りのフローが収まるまで積極的に買い向かうのは避けたい印象です。
全体的に、ドル売りの流れは一服か
ここまで見てきたように、金利は主要通貨は現在調整局面にあることがわかります。
8月は市場参加者も少なく流動性が低下しているため、9月以降に再度ドル売りの流れとなるか注視していきたいところです。